カープの2020年ドラフト指名選手の感想「華より実を選んだ的確な指名」
かなり久しぶりの更新になりますが、お読みいただけると幸いです。
コロナウイルスとの闘いで大変な一年となった2020年ですが、今年も無事にドラフト会議が行われました。
今年はプロ志望届を出した選手が374人で、これは過去最多だったそうです。本来なら社会人や大学に内定が出るような選手にも内定が出ず、イチかバチかでプロ志望届を出す選手も多かったのかなという印象です。
ただ実際に今年は特に大学野球でドラフト1~2位あたりで指名されそうな選手が相当多く、楽しみなドラフトでした。
これからカープのドラフト指名を振り返り、各指名選手の個人的な印象も残しておこうと思います。
ネームバリューより実利を取ったドラフト
今年のビッグ2といえば、早稲田の早川と近大の佐藤でしたが、カープはトヨタ自動車の栗林を単独指名しました。
早川か栗林のどちらか、と予想されていましたが、実際早川は4球団競合だったので、カープが早川に特攻していたら5球団競合、当たりクジを引ける確率は20%、外れを引く確率は80%という大博打でした。
そういった点から、1年目からある程度計算できる社会人出身の投手を単独指名したのは良い動きだったと思います。仮に早川に突撃して、外れ1位で栗林を指名していたら、そこでも競合していたと思いますし、個人的には良い指名だったと思います。
ここからは各指名選手の個人的な印象です。
ドラフト1位 栗林良吏
投手 トヨタ自動車 右右 177cm 80kg
大学時代もドラフト上位候補に挙げられていた好投手です。ただ大学の時は2位縛りがあったようで、指名漏れをしてトヨタ自動車に入った投手です。
少し遠回りになったかもしれないですが、トヨタ自動車での2年間でかなり大きく成長した投手なので、結果的にはこのタイミングでプロ入りできたことは、栗林にとってもプラスに働くのではないかと思います。
フォームは去年のドラ1森下のように、真上から投げ下ろすタイプです。ただ森下の方がしなやかで、栗林はもうちょっと硬くて、ちょうど森下と矢崎の間のようなイメージを持っています。
動画を見ていて印象的だったのは、変化球で三振を奪えているところです。結構このポイントは重要で、凄いストレートを投げていてもストレートだけだとプロで即戦力になるのは難しい印象をもっています。
その点栗林は、追い込んでからウイニングショットになる変化球を持っていて、それをコントロール良く投げ込めています。これは一年目から活躍する為にかなり大事な必須事項だったりします。
それができている栗林は本当に会心の指名だったと思うし、一年目からフレッシュかつ社会人出身らしい大人なピッチングを見せて欲しいと思います。
ドラフト2位 森浦大輔
投手 天理大学 左左 175cm 70kg
ドラフト2位は天理大学の森浦投手。
正直今年に入ってからのピッチングは動画でも見たことがないのでなんとも言えないですが、大学4年次の成績は破格の数字です。
春はコロナの影響で開催中止でしたが、秋はすごいです。
5試合に投げて4勝1敗、防御率0.69。39イニングを投げて被安打はわずか14。奪三振は52個、四死球は6だそうです。
2019年の動画を見ると、球威はそんなに感じないですが、ボールの出所をしっかり隠して打ちづらそうな投手です。ただもうワンランク上の球威は欲しい気がします。とはいえ正直大学4年のあの圧巻の成績を見ると、どういうピッチングをしているのか非常に興味がわく投手です。
ドラフト3位 大道温貴
投手 八戸学院大 右右 178cm 78kg
ドラフト3位は個人的に今年の大注目の推し選手だった大道。
カープは東北の選手をあまり指名しないのでカープには縁がないかなぁと思いながらも、どのチームに行くのか興味深く見守っていた投手です。そんな大道をまさかカープが指名するとは、と驚きつつもかなり嬉しい気持ちになりました。
大学下級生の頃はもう少しスラっとして柔らかくて美しいフォームで投げる投手でしたが、上級生になってからは、強さが出てきました。
身体も随分大きくなり、フォームもしなやかというよりは直線的なフォームに変わりました。それでもフォームが良いフォームであることに変わりはありません。
感情を表に出す力投型の投手で、こういう投手がブルペンにいるとチームとしては非常に助かるだろうなぁという印象です。
でもリリーフしかできない投手ではなく、先発リリーフ両睨みタイプの良い投手ですし、即戦力としてかなり期待している投手です。
ちなみにこの投手も大学4年秋に破格の成績を挙げていて、なんと36イニングで被安打が18、そして奪三振がなんと60!だそうです。四死球は9個とまずまずです。
とにかくプロに入っても気迫を全面に出して、バンバン三振を取って行って欲しいと思います。熱い選手ですしすごく楽しみにしています。
ドラフト4位 小林樹斗
投手 智辯和歌山高 右右 182cm 85kg
高校2年の時から甲子園で投げて、その馬力で注目されていた好投手です。
ちなみに今年のカープのドラフト1~3位は、去年までのカープのドラフトっぽいロマンタイプではなく、結構実戦的な投手が多いです。
そんな中でこの小林は去年までのカープが指名する投手っぽいというか、強い体を持っていて、強い球を投げられる、強い投手です。
フォームは変化球を投げるときには結構ばらける感じですし、全体的に左足を上げた時にピタッと止まりすぎてパワーが生まれにくい感じがします。
それでもしっかり下半身と上半身が連動した時には凄い球を投げる投手なので、これからしっかり練習して再現性を高めていければ、相当伸びしろのある投手だと思います。
体の作りやフォーム的に大きく曲がる変化球はあまり投げられないタイプだと思います。だからこそ、変化球を投げる時に大きく曲げたいという意識が働いて、フォームがブワァっと外に外に開いている感じが個人的にはします。
そこはもう逆の発想で、ストレートと同じ軌道でストレートと同じ球速を出すイメージで変化球を投げれば、ストレートと同じ軌道からキュッと小さく曲がる実戦的で打ちづらい変化球を投げられると思っています。
いわゆるピッチトンネルをうまく使える投手になると、一気に頭角を現すのではないかと大きく期待しているピッチャーです。
去年までのカープが指名するタイプの投手ですが、もう少しまとまっていて成長していく未来が見えやすいタイプの投手なので期待しています。
ドラフト5位 行木俊
投手 四国IL徳島 右右 183cm 75kg
高卒2年目の独立リーグ出身の投手ですが、カープにしては珍しく育成指名ではなく本指名をしました。それだけ将来性に大きく期待をしている投手なんだと思います。
動画を見た印象ですが、まだ体も細いですしフォームのバランスも改善の余地が大いにあり、かなり素材型の印象を受けます。
成績を見ても、独立リーグで奪三振率が3.82というのは、ちょっとドラフト本指名される投手としては物足りないものがあります。
とはいえそれは現時点の数字や力であって、これからの将来性を決めるものではありません。
高卒2年目ですし、ほとんど高卒と同じ感じで体作りからのスタートになると思うので、たくさん食べてトレーニングを積んで、しっかり体を作って欲しいと思います。
ドラフト6位 矢野雅哉
内野手 亜細亜大 右左 173cm 71kg
小柄でスピード感があり、鬼肩を持つショートの選手です。身体能力の塊のような選手ですが、とりわけ肩はすごくて、某ドラフト情報サイトの情報によると遠投128メートルだそうです。
バッティングはバットを短く持って、ホームベース寄りギリギリに立って、体を小さくかがめるヤクルト青木タイプで、相手投手からすると投げづらい打者です。
ただそれで良い打球を打てるかといえば、それは別問題です。
バッティングはプロに入って相当変えていくことになると思いますが、根本的な眼は意外と良いし、尖った一芸を持った選手です。
あとはその武器をプロの一軍でどう輝かせるのか、楽しみに成長を見守りたいと思います。
育成ドラフト1位 二俣翔一
捕手 磐田東高 右右 180cm 76kg
強肩が武器の素材型のキャッチャーですが、詳しくは知らない選手です。
ただカープは今年は石原が引退して、白浜も何気に34歳で、會澤と坂倉と磯村は一軍にいることが多いので、実は二軍にはキャッチャーが少ないです。
肩という武器があるので、あとはその肩を実戦で活かせる型を身に付けてほしいと思います。
総評
小林樹斗のところでも少し触れましたが、去年までのカープのドラフト指名はロマンに全振りした感じでした。ところが今年はドラフト1位の栗林にしろ、ドラフト3位の大道にしろ、完成度が高くて即戦力度の高い投手の指名が多かったです。
この路線は個人的には良い方針転換だと思います。
ロマンはロマンで楽しみなんですが、正直ここ数年ロマン指名から開花した選手がちょっと少なかったのは事実です。その反省を生かして、来年すぐ一軍で出番がありそうな投手をしっかり補強したかった、という思いが強く伝わるドラフトでした。
ネームバリュー的には地味で華がないと思われるかもしれないですが、かなり実戦的で的確な指名ができたんじゃないかと思います。
来年巻き返しを図るためにも今年入団する選手にかかる期待はとても大きいです。
あとは当然、直近入団した選手たちにもブレイクして欲しいし、みんな自分の持ってる能力を最大限発揮して、チームの勝利に貢献して欲しいと思っています。