石井琢朗が打撃コーチ就任。日本シリーズを観ての感想など。
石井琢朗コーチが新井コーチの後任として打撃コーチに就任することが決まりました。
石井コーチは2012年にカープで引退し、その秋からカープでコーチを続けてくれているのでこれでコーチ4年目ということになります。
野村前監督時代から緒方監督とは同僚だったし緒方監督ともコミュニケーション取れるので頑張って欲しいと思います。
というかやっぱり監督と前打撃コーチの新井コーチが不仲でコミュニケーションがなかったというのはつくづく勿体なかったと思います。
石井琢朗コーチの現役時代の記録
新井コーチのことはさておき、石井琢朗コーチの現役時代は晩年をカープで過ごした以外はほとんどベイスターズで過ごしました。なので石井コーチの現役時代については詳しくありません。
一応ネットで調べると、投手としてプロ入りをして1軍で勝利を挙げて「桑田二世」なんて言われていたみたいですが、3年目に自らの意志で野手転向したそうです。
バッティングは篠塚和典にあこがれているらしく確かに篠塚さんタイプのヒットメイカーです。
打者転向からヒットを積み重ねて現役生活24年で通算2432安打をマークしました。
2432安打というのは歴代11位の記録で、落合博満さん、川上哲治さん、山本浩二さん、前田智徳さん、野村謙二郎さんら2000本安打を記録した選手よりも多い安打数です。
前打撃コーチの新井宏昌さんも2000本安打達成者ですが新井前コーチよりも石井琢朗コーチの方が安打数は多く、もちろん篠塚和典さんよりも安打数は多いです。
さらに1993年から2002年まで10年連続100安打以上をマーク。97年~2006年までの10年間のうち9年で150安打以上。
正直全盛期の石井琢朗さんは見ていないですが、残された数字を見ると長期に渡り安定してヒットを打ち続けたということは分かります。
またブログを見てても分かりますが、言いたいことを自分の言葉にする術も持っています。
打撃コーチとしては新任になりますが、今までの経験を自分の言葉で選手たちに伝えて欲しいです。
ちなみに打撃コーチ就任にあたり琢朗コーチは「目の重要性」や「数字に表れない点の取り方」や「アウトの捉え方」といったコメントを出しているようです。
今年のカープは1アウト3塁で無得点というパターンを何度も見ただけに、「絶対に1点取りたい場面で確実に1点を取る」ような状況に応じたバッティングを期待しています。
日本シリーズとCSも観てます
話は変わりますが、日本シリーズを観ています。あとCSも観ていました。普段はセリーグの試合を観ているので、どちらかというとCSはパリーグ中心に観ました。
観ていて思うのは「打てない選手は打てない打ち方をしているし、打てるバッターは打てる打ち方をしているな」という当たり前のことです。
ソフトバンクの松田のバッティング
ソフトバンク松田と言えばかなりホームベースから離れて立っているのでインサイドの球も窮屈にならず普通にさばけてしまいます。
さらに打つ時に上体を斜めにして打つことでレベルスイングの要領で無理なく低めの球を拾うバッティングになっています。
松田と言えばケンケン打法とか歌舞伎打法とか言われてますが、打った後にあれだけ身体がケンケンになるってことはそれだけ踏み込んで打てている証拠です。
打席の左右の違いもあるのでマネはできないですが、あの踏み込みは丸も参考になる部分があるように思えました。
まぁ松田の打ち方は顔がベースの近くに来るのでインハイの球に対して恐怖心があるとは思います。
ただそこを克服すればインコースは楽にさばけるし上体を傾けている分低めの球もムリなく拾える右打者にとってはかなり良い打ち方です。
柳田悠岐のバッティング
柳田はテイクバック時にバットを担ぐようにして打つのが特徴です。あれが柳田のフルスイングを支える重要な要素です。
要はテイクバック時にバットを担ぐようにすることで「グリップを身体の近くに持ってくる」ことができています。
グリップを身体の近くに置いて、あとは身体の回転でバットを振るスイングです。
グリップが身体に近い位置にあるのでヘッドを効かせることができますし、腕の力に頼らない分身体にムリなくフルスイングができます。
イ・デホのバッティング
イ・デホも柳田と同じようなバッティングです。
バットを担いでグリップを身体の近くに持ってきて身体の回転でヘッドを効かせて振り抜きます。
グリップが身体の近くを通るからバットが身体に巻き付きます。だから反対方向へも強く低い打球が打てます。
ちなみにイ・デホは右打者ですがライト方向への打率は.348あります。ホームランも5本打っています。
そりゃそうだって感じのバッティングです。
柳田もフルスイングのイメージがありますが、逆方向への打球は低く強く打ててレフト方向の打率は.274とまずまず打っています。ホームランも14本打っています。
中村晃のバッティング
ソフトバンクのヒットメイカー中村はトップを作る前から常に軸足に体重を乗せていて、軸足に体重を乗せておく時間が非常に長いです。
あれだけ軸足に体重を乗せておけば、緩い球でタイミングを外されても身体が前に突っ込むのを防げてバッティングに間ができます。
だからストレート待ちでも緩い変化球にも対応できます。
ちなみにストレートに対しての打率は.282で、チェンジアップに対して.371、カーブに対して.333と緩急の変化についていける対応力は数字にもしっかり表れています。
CSを観てるとロッテの清田も同じような感じのバッティングをします。一本足打法ばりに軸足に体重を乗せて球を待つ感じです。
清田も軸足にしっかり体重を乗せているので緩急への対応力が強そうだと思い成績を見ると、ストレートに対して.321、チェンジアップに対して.333、カーブに対して.400となっています。
打てるバッターは正しい身体の使い方と理に適ったバッティングフォームをしている
結局見ていると、打てるバッターは打てる打ち方をしているということが分かります。
もちろん打者にはいろんなタイプのバッターがいますが、ソフトバンクの打者を観ているとそれぞれのバッターが各々に合った身体の使い方と、理に適ったバッティングフォームを身に付けています。
「軸足に体重を乗せる」、「グリップを身体の近くに持ってくる」「腕じゃなく軸回転でヘッドを走らせる」という基本ですが理に適った打ち方をしています。
松田はそれに加え「上体を傾けることでレベルスイングの要領で無理なくアウトローの球を拾う」というバッティングになっています。
見てるだけでそりゃ結果出るわという感じです。
選球眼は天賦の才?
ビリー・ビーンとか言うセイバーメトリクスおじさんの台詞のなかに「選球眼は天賦の才で決まる」というものがあります。
ちなみに昨日の試合はベイスターズ前監督の中畑清さんが解説をしていて「ソフトバンクのバッターはボール球に手を出さない」「選球眼が良い」と言っていました。
とくに柳田やイ・デホがそうですが、ああいうグリップを身体の近くに持ってきて軸回転で打てるバッターは下半身が開いても上半身は最後まで開きません。
だからボール球が来ればバットが止まる訳です。
逆に選球眼が悪いと言われるバッターほど腕でバットを振る、グリップが身体から遠いので割れが作れずボール球だと頭では分かっていても手を止められないという感じです。
ソフトバンクは強打のイメージですが闇雲に打ってる訳ではなくボール球は打たない、打てる球を打つというバッティングがチームで出来ています。
今年のチーム成績を観ても四球507、出塁率.340、IsoD.073と出塁率系の数字はすべてリーグトップです。また三振数はリーグ4位ですがリーグ平均980に対して950個とそこまで多くないです。
三振数や四球は現象によって起こされた結果ですが、その結果をもたらした現象は言うまでもなくバッティングフォームや打撃技術です。
結果を出せる技術があれば自然と結果も出せるんだなというのがよく分かります。
ビリー・ビーンが言うようにたしかに選球眼そのものは天賦の才というのも一理あります。
ただ選球眼を発揮できるバッティングフォームと選球眼を発揮できないバッティングフォームもあります。
カープの菊池も肩を開く動きでバットを振る時は上体が開くのでボール球に手が出ますが、下半身が開いても上半身は開かず腰の動き主導で打つ時にはボール球に手は止まります。
菊地の選球眼が今年の前半と後半で急に変わった訳ではないですが、フォームが変わったことによって四球の数が増えました。
つくづく野球は技術次第でどうとでもできるスポーツなんだなと思わされます。