加藤拓也のふてぶてしいインタビューは好感が持てた。
2016年ドラフト一位の加藤拓也に興味津々です。
ドラフトで指名された当初はまずは二軍で、夏場頃から一軍に上がってリリーフとして投げてくれれば、と思っていましたが、今は少し違う印象を持っています。
加藤拓也はリリーフか先発か
将来的にはリリーフでも先発でも一流になってくれるだろうと思っていますが、現状一軍でやっていくなら先発かなぁと今のところ思っています。
ちなみに加藤の課題としてよく挙げられるのは、球数の多さとコントロール、あとは球種の事だと思います。
球種は確かにもう少し実戦レベルのものがあれば良いと思います。そうすればリリーフでも先発でも大きな武器になります。
球数に関しては今の加藤なら増えてしまうのはもうしょうがないです。
元々大学時代も150球とか余裕で投げていた投手ですし、スタミナはかなりある方です。
コントロールはあのフォームですし、縦回転を使って上から投げ下ろすタイプなので、高めに球が抜けたり暴れるのはある程度織り込んでおく必要があります。
むしろ高めに行く球があるから落ちる球も生きてくるという意味では、ある意味持ち味でもあります。
左右の投げ分けに関しては精度を高める必要はありますが、あの投げ方であれば高めに抜けるのは仕様なので織り込んでおいた方が良いです。
加藤をリリーフで使うとどうなるか
縦回転のフォームで球が高めに抜けたり暴れるタイプの現状の加藤をリリーフで使うとなるとと、使える局面がかなり限定されてしまいます。
まず接戦リード時に起用して即四球になるとたまりません。
また縦回転のフォームでちょっとリリースが狂えばすぐ球は高めに浮くので、長打を打たれる怖さもあります。
そうなるとますます接戦リードの勝ちパターンでは使えません。
現状の加藤を一軍でリリーフとして使うなら、ビハインド要因一択という事になります。
そしてビハインドのリリーフとして投げるなら今の加藤で十分機能はすると思います。
ただそれは今の加藤の良さが維持できた時のみです。
怖いのは短いイニングなので余裕がなくなり、加藤本来の投げっぷりや腕の振りが鈍ってしまう事です。
加藤は腕を振ってなんぼの投手ですし、リリーフで1イニングを大事に置きに行くピッチングをしては良さが完全に消えます。
そうなるとリリーフでも一軍では通用しなくなります。
加藤を先発で使うとどうなるか
球数が多い加藤を先発で使うと、今は6回110球3失点くらいが標準的な出来になるのかなぁという印象です。
これを十分とみるか不十分とみるかは人によって分かれるところだと思いますが、大卒1年目のルーキーとしては上出来だと個人的には思います。
ある程度イニングを投げる先発なら、リリーフと比べ余裕もあり窮屈なピッチングにならずに済みますし、加藤の持ち味も死なずに済みます。
そして先発ローテの5番手6番手として6回3失点くらいで投げながら、自分の課題を身をもって体感できればその後の成長曲線が大きく上向くはずです。
開幕から加藤が先発ローテで投げるうちに、出遅れ組の大瀬良・福井・戸田あたりも戻ってきます。
出遅れ組が一軍の先発ローテに入ってくれば、加藤は課題と通用する部分を自分で理解した状態で二軍に行く事になります。
そこで一軍で結果を出す事を想定した野球に取り組める、というのが個人的に思い描く筋書きです。
話題になっている加藤拓也のインタビュー
そんな加藤はピッチング以外でもいろいろと話題になっています。
特に話題になっているのは先日のオープン戦後のインタビューです。
態度が悪いとかふてぶてしいとか色々言われていますが、個人的にはこれくらい尖った選手がいた方が楽しいし、加藤の気持ちも理解できます。
そもそも出来が悪かったのにインタビューされるというのがシーズン中では異例です。まぁこれもドラフト1位ルーキーの宿命と言えば宿命ですが。
そんな異例のインタビューも序盤は普通でした。
出来の悪かった投手へのインタビュアーの執拗な質問で空気が不穏に
始めは普通のインタビューでしたが、雲行きがあやしくなったのが
インタビュアーに「ボールが荒れちゃったという事で、その辺の原因分析というのは?」と聞かれたあたりです。
加藤が「安定したフォームで投げれてなかったので。」と答えたらインタビュアーが「その安定したフォームで投げられなかった要因というところまで行くと?」と畳みかけたあたりで完全に空気が変わりました。
インタビュアーもインタビューするのが仕事ですが、加藤の立場からすると出来が悪い試合直後のインタビューでそこまで掘り下げて聞かれれば普通にイライラします。
またインタビュー終盤で「石原さんのリードの感想は?」「打席に立った感想は?」と何度も感想感想と連発されれば、質問に真摯に応じようとすればするほどイライラします。
大体ピッチャーに対して「打席に立った感想は?」ってそんなの「無」しかないです。
そういったイライラを表に出すか出さないかは人それぞれですが、こんな出来のピッチング内容で試合直後にインタビューを受け、それがテレビで放送される事はシーズンに入ればそう多くはないです。
個人的にはまぁあまり顔に出したりはしないようにしつつも、そこまで気にしなくて良いと思っています。
あとインタビュアーについては、ルーキー投手に「石原さんと組んでリードの感想は?」とか「會澤選手の時と変わりましたか?」とか聞くのはどう考えてもおかしいです。
そもそも出来が悪いピッチングの直後に「捕手の感想」を聞かれてなんと答えれば良いのでしょうか。
負けん気の強い選手なら「緊張しました」とも言いたくないでしょうし、答えようがありません。
また「會澤選手の時と変わりましたか」と聞かれても、ルーキーが先輩捕手を比較したり評価できるはずがないです。
例のインタビュー動画で印象に残った場面
不穏な空気になって以降は、全体的にふてぶてしいしひいき目に見ても態度が良いとはいえないものでした。
ただ当たり障りのない受け答えに終始せず、きちんと自分の言葉でインタビュアーの質問に真摯に答えようとしていたのが印象に残りました。
その中でも特に印象深かったのは、「手ごたえのあった部分や収穫は?」と聞かれた時の受け答えです。
まず
「しっかりと投げ切った部分や、ボール自体は…通用したのかなと。」と言ったあとに、通用という言葉が自分で腑に落ちなかったようで、
「まぁ通用というか、そこまではわからないので。」と言っていました。
あの場面は、「まだオープン戦だしプロの打者が本気で向かってきてる訳じゃないのに通用もなにもない」と自分で自覚したから、通用という言葉に引っかかりを覚えて言い直したんだろうなと個人的には思いました。
そしてそのあと
「ちゃんと投げ切ったボールは何球かあったので、そういうボールは良かったと思います。」と相手を含めての話ではなく、自分自身という範囲内の答えに言い直していたのは、本当に言葉を意識して選んでるなぁという印象を受けました。
加藤のように言葉を自分なりに考えて選んで答える選手には、上手いインタビュアーが上手く質問すればかなり深い回答が得られるはずです。個人的にこういう選手はとても好感が持てます。
とにかくあのインタビュー動画は、出来の悪いピッチング時にインタビューされたタイミングの悪さとインタビュアーとの相性の悪さが壊滅的に巡り合って起きた事故だと捉えています。
加藤拓也は負けん気の塊
ピッチングやマウンドでの振る舞いを見ても、インタビューの受け答えを見ても、加藤はとにかく負けん気が強いように見えます。
また、強い言葉を使うのは、それで自分を追い込む意図があるのだろうと思いますし、強い言葉を先に出して、その言葉に自分を追いつかせて結果を出すタイプなんだろうなと思います。
今はまだコントロールの精度も低いし、ランナーが出ると身体運用が通常時と全く変わってしまうし、6回110球3失点的な投手だと思いますが、結果を出すという事に関しては人一倍強い気持ちがあるはずです。
あれだけデカイ態度でい続けて結果を出さない訳にはいかないです。
あとは高めに行くのを修正するよりは左右の投げ分けの精度を高め、クイックでもまず軸足に体重を乗せそこから前に体重移動する、という真っ当な身体運用が身につけばそれだけでかなり良くなります。
加藤はまだもう一段の成長が必要な投手ですが、成長すれば先発としても結果を出せますし、リリーフでも勝利の方程式を担えるだけの潜在能力を秘めた投手です。
ちなみに加藤拓也の負けん気はカープの野手で言えば(礼儀作法という鎧を着ていない)田中広輔に近い印象を持っています。
二人とも華麗さとは縁遠いし不格好かもしれないですが、着実に力をつけて結果を出してくれるはずです。
加藤からはそういうギラギラしたものを感じますし、いずれチームの核となってくれる選手だと思ってこれから期待していきます。