ビデオ判定による誤審で田中広輔のホームランは幻に。NPBでもチャレンジ制は導入されるのか?
2015/09/14
野球の主役は選手であるべきだと思っていますが、今日の試合の主役は審判団でした。
審判の判断がこの試合の勝敗を分けた可能性が非常に高い、というなんとも後味の悪い試合でした。
田中広輔の放った幻のホームラン
延長12回の表に田中広輔が放った打球はフェンスの最上部を越え、観客席側にある防護網に当たりグラウンド内に跳ね返りました。
この打球がビデオ判定の結果ホームランではなく三塁打となり、その後カープは得点を奪えずに同点引分となりました。
1アウト3塁で得点できないカープ打線もカープ打線ですが、あの田中広輔の打球がホームランならカープは1点勝ち越していた訳ですから、試合の勝敗が大きく変わっていた可能性が高いです。
あまりにも短時間で終わったビデオ判定
緒方監督が審判団に抗議をしてホームランかどうかビデオ判定に入りましたが、かなり短時間で審判団は「三塁打」という結論を出しました。
延長12回同点の場面でのあの打球がホームランかそうでないかのビデオ判定があんなに短時間で終わることがまず個人的には理解に苦しみます。
延長12回の1点はその試合の勝敗を大きく分ける可能性が非常に高いプレーです。
判断を下した審判に、「自分の決断がその試合の勝敗を直接的に左右する」という認識があったのかどうか。そこがまず疑わしいです。
仮に自分の判定がその試合の勝敗を直接的に左右する、という認識があればあんな短時間で判断は下せないのではないかと思います。
もっと慎重に慎重を重ねてジャッジできたのではないかと思わずにはいられません。
責任審判は東利夫審判
ちなみに今日の試合の審判団は
球審 良川昌美
塁審(一) 柿木園悟
塁審(二) 福家英登
塁審(三) 東利夫
となっています。
結構間違われやすいですが、野球に主審というものはありません。
一般的には球審がその試合の一番偉い審判のような感じがしますが、実際のところ主審という制度はなく野球の場合は責任審判という人がいて、その人は必ずしも球審であるとは限りません。
ちなみに二塁塁審が責任審判であることもありますし、三塁塁審が責任審判のこともあります。
一応この試合の責任審判は三塁塁審の東利夫審判だったようです。
その東利夫責任審判から試合後に、
「バックスクリーン方向からのリプレー映像を3回見直した結果、ラバー上部にあるフェンスにどんと当たって落ちたように“見えた”。」
「横からの映像は”見ていません”。」
との見解があったようです。
3回見直したそうですが、時間としてはかなり短時間でした。そもそも「ドンと当たって落ちた」って何なんでしょうか。めっちゃバウンドしてましたけど。
ホームランかどうかは甲子園の外野フェンスの定義のよる
一般的にホームランかどうかは、「フェンスの最上部を越えて、選手以外のものに当たったかどうか」で判断されます。
今回のケースであればフェンスの「最上部」を越えて、「選手以外」の「観客席側に設置された侵入禁止網」に当たっているのでボールデッドとなり、ホームランだと判断されます。
ただそれは一般的な話であって、仮に甲子園のフェンスの「最上部」の定義が、「観客席側に設置された侵入禁止網まで含まれる」ということであれば、田中広輔のあのホームランは幻のホームランとなります。
ちなみにyoutube等で、福留や八木の幻のホームランも見れますが、今回のケースとはまったく異なります。
八木の当たりも福留の当たりも、どちらも明らかにフェンスのラバー部分に当たっています。
ただ今回の田中広輔の当たりはフェンス最上部の網は明らかに越えていました。
また、甲子園の網の最上部は黄色く色が塗られています。
あれは一般的に考えれば「ホームランかどうかを確認する為に、フェンスの最上部を黄色く塗っている」ように思えるのですが、真相は甲子園のグラウンドルールによります。
フェンスの最上部を黄色く塗っているけど、観客席側に設置された防護網が実は真のフェンス最上部だ、というローカルルールがあれば、話は別です。
審判が甲子園特有のルールについても触れるべきだった。
結局今日の試合では、審判が判定についてきちんと説明しておけばこんな事にはならなかったはずです。
仮に
「甲子園のローカルルールで、「フェンス最上部」の定義が「観客席側に設置された侵入禁止用の網」まで含まれる。
だからあの当たりはフェンスに当たってグラウンドに戻ってきたと判断される。」
ということであれば、そういう風に説明すべきだったように思えます。
ただ今回の審判による説明でそのような説明は一切ありませんでした。
ここがハッキリ言って紛らわしいです。
ローカルルールがあるならローカルルールもちゃんと説明しないと見ている側は納得できません。
【追記】
今朝になって色々記事が出て来ていますが、どうも本来のフェンスを越えて観客側に設置された侵入禁止の網(忍び返し)に当たったものは普通にホームランになるそうです。
また東利夫責任審判は忍び返しの存在そのものを認識していなかったということだそうです。
NPB審判員の”クルーチーフ”を務めるような偉大な東利夫審判が、ローカル球場ではなく阪神タイガースのホームグラウンドの構造を理解していないってどういうことなんでしょうか。
まして東利夫責任審判は阪神タイガースOBなんですが、それでも忍び返しの存在を知らなかったというのは理解に苦しみます。
審判の権威はどこまで認められるものなのか
野球規則9.02には審判の裁定について記載があります。
そこには、
「審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるからプレーヤー、監督、コーチまたは控えのプレーヤーがその裁定に対して異議を唱えることは許されない。」
と記載されています。
つまり審判の判断は絶対だということです。
もちろん審判の仕事は大変だし、審判の権威を守ることは重要なことです。
ちなみにメジャーリーグ(MLB)では去年から、監督が審判にビデオ判定を求めることができるチャレンジ制の対象となるプレー範囲が大きく広がりました。テニスでもバレーでもチャレンジ制度は導入されています。
メジャーではチャレンジがあった場合は、その球場にいる審判ではなくリプレイコマンドセンターというところで待機している4人の審判員がリアルタイムでビデオを検証して判定を下しているそうです。
そしてリプレイコマンドセンターで下された判定が最終判定になるということで、現地の審判団の権威も何もありません。
審判を守る為にもチャレンジ制は導入した方が良い
結局今日の試合はもう終わってしまったので、今日のカープ対阪神タイガース戦は記録上は引き分けという扱いになります。
ただ、今の時代はネットにどんな画像や映像も残っているのだから、「田中広輔の放った打球がフェンス最上部を越えて観客席側にある侵入防止用の網に跳ね返っていた」という証拠はずっと残ります。
審判が誤審を認めなくても映像でその証拠が残っている。今後もこういったケースは山ほど出て来るはずです。
そうなると審判もずっと色々言われる訳ですし、生活を賭けて職業として野球をしている選手もモヤモヤするし、ファンもモヤモヤします。
結局のところ人の目なんて基本的に間違いを犯すものですから、審判を守る意味でもチャレンジ制は導入した方が良いと思います。
もちろんビデオ判定の機材を導入する費用は大変だとは思いますが。
ただ試合中継をしているテレビ局の映像を活用すれば費用もそこまで掛からないのではないかとは思います。
野球の主役は審判ではなく実際にプレーする選手たち
とにかく誤審をした審判を守ること、そしてなによりも、生活を賭けて野球をしている選手を守ること。
それを第一に考えるならチャレンジ制の導入は避けて通れないのではないかと思います。
当該審判員以外のリプレイコマンドセンターに待機している審判員が下した判断ということであればまだ納得は行きます。
もちろんそこでは各球場ごとのローカルルールも全て把握できているはずですし。
そして審判はビデオ判定の結果について、観客に対し分かりやすく説明をする必要があるのではないかと思います。