戸田隆矢は「ランナーいたら死んじゃう病」さえ治せば即活躍できる
2015年気になった選手を取り上げるエントリーの二人目は戸田隆矢です。
久本も「鯉のチェン」と絶賛する戸田隆矢の潜在能力
戸田はなんだかんだ一軍で出番があるので意外と言えば意外ですがまだ22歳です。今年のドラ1岡田など大卒ルーキーと同じ年齢です。
その年齢でこれだけ一軍で投げている訳ですから、潜在能力は非常に高いものがあります。
元中日ドラゴンズの久本も戸田の潜在能力を高く評価し、「指にかかった時のストレートはチェンのようだ」と言っています。
まだ21歳だった2014年には30試合に登板し57イニングを投げ防御率3.32。奪三振は36、WHIPは1.42。
高卒3年目の21歳の成績としては申し分ありません。
22歳になる今年は34試合に登板し、62イニングを投げ防御率は3.63。奪三振は44でWHIPは1.42。
四球率や奪三振率などに上積みがなかったのは残念ですが、球速はMAX149キロまで伸ばしてきました。来年はおそらく150キロは超えてくるだろうと思います。
仮に戸田が大学に進学していたとすれば今年ドラフト対象だった訳ですが、もし戸田が今ドラフトの対象だったとすれば何位で指名されていたのでしょうか。
左腕でMAX149キロ、コントロールも悪くないということであればドラフト1位か2位で指名され大いに将来を嘱望されるような投手だったろうなと思います。
それくらい22歳時点での能力は高いものがあります。
戸田と言えば「ランナーいたら死んじゃう病」
戸田の課題といえば、良いピッチングをしていてもランナーが出ると途端にピッチング内容が悪くなることです。
状況別の成績を見ると
状況 被打率(打数-被安打)
ランナーなし .225(129-29)
ランナー一塁 .353(34-12)
ランナー二塁 .238(21-5)
ランナー三塁 .143(7-1)
ランナー一二塁 .294(17-5)
ランナー一三塁 .571(7-4)
ランナー二三塁 .111(9-1)
ランナー満塁 .222(9-2)
という感じです。
ランナーなしなら被打率.225なんでまぁそれなりに優秀な投手です。ただ一塁にランナーがいると.353になるなど、全体的にランナーがいると成績が悪くなります。
メンタル面も原因のひとつなのかもしれないですがメンタル面は目で見て確認できないので何とも言えません。
ただとりあえず目で見て確認できる範囲で原因を探れば、クイックが苦手すぎることがまず原因として挙げられます。
ちなみに状況別の成績で
クイックが不要な場面(ランナーなし、三塁、二三塁、満塁)
クイックが必要な場面(一塁、一二塁、一三塁、二塁)
で分けて成績を見てみます。
すると、
クイック不要 .214(154-33)
クイック必要 .329(79-26)
と明確に違いが出て来ます。
要するにランナーがいると死ぬというよりは「クイックをすると死ぬ」病です。
戸田隆矢のクイックの問題点
戸田は左投手なのでそこまで慌ててクイックする必要自体がそもそもないですが、戸田はクイックに異常にこだわりがあるのか、かなり慌てたクイックをします。
具体的に言えば投げる前からスタンスが広めで、軸足に体重を乗せることなくそのまま前方向へスライドして投げる感じです。
スタンスが広くて軸足に体重を乗せない訳ですから、体重移動の際の推進力を完全に球に乗せることができず球の威力は落ちます。
さらに前への推進力がないまま上体の力に頼って投げるので球のノビやキレも悪くなります。またリリースポイントも安定しないのでコントロールも悪くなります。
クイックより牽制を磨いて欲しい
そんな感じでかなりクイックの苦手な戸田ですが、そもそも左腕なので別にそこまでクイックにこだわることもない気もします。
もちろんクイックができないよりはできた方が良いですが、クイックをすることで球威コントロールともに極端に悪くなるのであれば本末転倒です。
というか左腕なんだからクイックよりも牽制を磨いた方が実践的ではないかと思います。
ちなみに左腕は一塁方向に真っ直ぐ踏み出す牽制と一塁とホームの中間くらいに斜めに踏み出す牽制をミックスできるという特権があります。
その2種類の牽制を組み合わせればランナーもそうそう走れません。リードも大きくとれません。そうすればそこまでクイックを早くする必要もない訳です。
クイックをするにしてもスタンスを広くして軸足に体重を乗せないまま投げるのではなく、通常のピッチングと同じように軸足に体重をきちんと乗せてから前に体重移動をする、その速度をちょっと早める感じで良い気がします。
クイック以外はそれほど弱点がない戸田
クイック以外に戸田の弱点はと言うと、正直そこまで見当たりません。
対左打者に対して被打率.239 OPS.689
対右打者に対して被打率.262 OPS.699
と左右を問わず抑えられます。
また球種別の打率を見ても
ストレート 被打率.295(112-33)
スライダー 被打率.200(70-14)
チェンジアップ .被打率.227(44-10)
と全体的にそれなりに抑えています。
コントロールもそれなりにまとまっていて、さらにバッティングセンスも投手の割にかなり高いです。
先発ローテに入れるならもうちょっとスタミナが欲しいところですが、22歳時点でこれだけまとまっていて球速も150キロ近い左腕はそうそういないです。
かなり潜在能力は高いのであとは本当にクイックだけです。クイックというかまぁ左腕特権の牽制を磨くだけかと思います。
それだけで来年はかなり飛躍するんじゃないかと期待している選手です。
戸田は先発?リリーフ?
去年も今年も戸田は先発リリーフ問わず便利屋として一軍で起用されてきました。
もちろんチーム事情で言えば戸田がロングリリーフや7回にいてくれれば非常に心強いです。だから今季の起用法もまぁ分からなくはないです。
ただ戸田自身は先発希望が非常に強いということなので、まぁ本人がそういうなら先発で使ってあげても良いかなと思います。
というか今のカープでリリーフで活躍すると今村中田廉大瀬良といった感じの前例があるのでリリーフをしたくないかもしれないですが。
とりあえず戸田の場合はクイックでもしっかり軸足に体重を乗せてあとは牽制を磨くことができれば、先発リリーフ問わずもう一段上のステップに行けます。
来季は兄貴分の久本も復帰しますし、ぜひとも戸田にはカープの一軍の左腕を引っ張っていける存在になって欲しいと思います。